- いち
- I
いち【一・壱】〔下にカ・サ・タ・ハ行の音がきて一語のように用いられると「いっ」となる〕(1)数の名。 自然数の第一番目の数。 ひとつ。
「~円」「~本」「~冊」
(2)(ア)順序の最初。「~の宮」「~の子分」(イ)物事の初め。 最初。 「~から始める」「~から十まで」(ウ)最高。 最上。 一番。 「クラスで~の悪童」
~押し二押し強引に自分の意志を通そうとすること。「~三に押し」
~押し二金(カネ)三男(オトコ)思う女性を自分のものとするのに必要な条件は, 第一に押しの強さ, 第二に金の力, 第三に男振りであるということ。 一押し二金三姿。~か八(バチ)か運を天にまかせて, 思い切ってやってみること。 のるかそるか。「~の大博打(オオバクチ)」
〔「丁」と「半」の字の上部をとったもの, またサイコロの目に一が出るかしくじるかの意で「一か罰か」より出たものという〕~から十まで初めから終わりまで。 何から何まで。 すべて。「~面倒を見てやる」
~金(キン)二男(ナン)遊興に大切なものはまず金で, 男振りは二の次である。 いちかねにおとこ。~工面(クメン)二働き世の中に生きてゆくには, まず第一に工夫で, 体を動かすことはその次である。~と言って二と無いとび抜けて優れていて二番に続くものがない。 群を抜いて優れている。~にも二にも他に比べるものがないほどそれが大事だ。「語学学習に必要なのは~繰り返しの練習だ」
~の裏は六〔さいころの一の目の裏は六であることから〕世の中は, よいことばかり, 悪いことばかりではない。「~, 悪の裏は善なり/仮名草子・竹斎」
~姫(ヒメ)二太郎子供は, 最初が女の子で次に男の子が生まれるのが理想的だ, の意。~富士(フジ)二鷹(タカ)三茄子(ナスビ)初夢に見ると縁起の良い物を列挙した文句。 駿河国(今の静岡県)の名物を列挙したものとする説もある。~も二もなくあれこれいうまでもなく。 異議なく。 無条件で。「~承知する」
~を聞いて十を知る〔論語(公冶長)〕物事の一端を聞いただけで, その全体を理解するほど, 聡明である。~を以(モツ)て万(マン)を=知る(=察す)〔荀子(非相)〕「一を聞いて十を知る」に同じ。IIいち【位地】くらい。 地位。IIIいち【位置】(1)物のある所。 場所。「箪笥(タンス)の~を変える」「南東に~する」
(2)全体あるいは他との関係で占める場所。 立場。IV「社の重要な~にいる」
いち【市】(1)多くの人が集まって物を売買する場所。 律令制時代には, 官設の市が平城京・平安京それぞれの東西にひらかれ, 地方の国府にも設けられた。 中世以後, 交通の要地に設けられ, また次第に定期市として発達し, 貨幣の流通によって交換の場から商業市場へと発展。「縁日には~が立つ」
(2)多くの人が集まるところ。→ 市をなす(3)まち。 市街。「数ならぬわが身は~の溝なれや行きかふ人の越えぬなければ/散木奇歌集」
~が栄・えた〔「一期(イチゴ)栄えた」の転じたものという〕御伽(オトギ)話・昔話などの最後につける言葉。「めでたし, めでたし」の意。 「すぐにお蔦が, 新しい半襟を一掛礼に遣つて, 其の晩は~・えたが/婦系図(鏡花)」
~に帰(キ)するが如(ゴト)し〔孟子(梁恵王下)〕市に人が集まるように, 仁徳のある人のところに人々が慕い集まる。~に虎(トラ)あり〔三人の人が市に虎がいると言えば, 実際には虎がいなくてもいると信じられるようになるという「戦国策(魏策)」「韓非子(内儲説上)」などの故事から〕根も葉もないうわさでも, 多くの人が口にするうちに本当のことと信じられるようになる。 三人市虎(シコ)をなす。~に虎を放(ハナ)つ〔人の多く集まる市に虎を放す意から〕非常に危険なことのたとえ。~を為(ナ)・す多くの人が集まる。V「門前~・す」
いち【逸】〔「いた(甚)」「いと(甚)」と同源。 「逸」は当て字〕形容詞, 時には名詞・動詞に付いて, 勢のはなはだしい, すぐれているなどの意を添える。「~じるしい」「~はやい」「~もつ」
Japanese explanatory dictionaries. 2013.